重鉱害復旧田における作土の理化学性改善と水稲収量の向上対策

[要約]作土の肥沃度が低い重鉱害復旧田に、牛ふん堆肥を6t/10a連用すると作土の理化学性が向上する。また、基肥に被覆尿素肥料を窒素成分で6s/10a上乗せ施用するか牛ふん堆肥を施用して被覆尿素肥料を3s/10a上乗せ施用すると2年目には従来作土を用いた鉱害復旧田と同等の収量になる。


鉱害試験地 [連絡先]09494−2−0245
[部会名]生産環境 [専門]土壌 [対象]稲類 [分類]普及


[背景・ねらい]

重鉱害田の復旧工事では、従来作土が利用できないため作土として水田下層土や花こう岩由来の未耕土のような肥沃度の低い土壌を用いることが多く、従来作土を用いた鉱害復旧田に比べて水稲の生育や収量は不安定になりやすい。そこで、重鉱害復旧田の土壌理化学性の実態を調査するとともに、牛ふん堆肥の施用による土壌理化学性改善効果を明らかにする。また、このような肥沃度の低い土壌に対する地力窒素代替としての緩効性肥料の施用効果を検討する。

[成果の内容・特徴]

1 水田下層土を作土として用いた重鉱害復旧田は腐植含量、可給態窒素含量及び可給態リン酸含量が、県内水田土壌の平均値と比較して著しく低い(表1)。
2 年ふん堆肥を10a当たり6t連年施用すると、1年目から作土の腐植含量、可給態窒素含量、可給態リン酸含量は増加し、2年目には腐植含量は水田土壌の改良目標値(3%以上)に達し、作土の理化学性が向上する(表2)。
3 100日タイプのリニア型被覆尿素肥料を地力窒素代替として10a当たり窒素成分で6s基肥に上乗せ施用すると、1年目からu当たり籾数は3万粒以上になり、2年目には収量は従来作土の場合と同等以上になる(表3)。
4 牛ふん堆肥を10a当たり6t連年施用し、さらに100日タイプのリニア型被覆尿素肥料を10a当たり窒素成分で3s基肥に上乗せ施用すると、2年目にはu当たり籾数は3万粒が確保され、従来作土の場合と同程度の収量が得られる(表3)。

[成果の活用面・留意点]

1 重鉱害復旧田における土壌生産力向上のための資料として活用する。
2 「ヒノヒカリ」の場合には、被覆尿素肥料は100日タイフのリニア型を用い、作土の可給態窒素含量により加減する。なお、他の品種の場合には、早晩性や作期等品種の特性に応じて溶出期間の異なるものを用いる。
3 年ふん堆肥は完熟したものを水稲収穫後に連年施用する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:重鉱害復旧田における土壌生産力向上
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成7〜9年)
研究担当者:渡邉敏郎、庄籠徴也、豊田正友
発表論文等:平成7〜9年度福岡県農業総合試験場鉱害試験地試験成績概要書