有機物及びケイカルの連年施用による水田土壌の地力維持、増強

[要約]稲わら全量還元とともに、10a当たりおがくず入り牛ふん堆肥2t、ケイカル140kgを連用すると、全窒素、可給態窒素及び可給態ケイ酸含量が高まり、水稲収量が高位安定する。また、肥沃度が高く、排水良好な砂壌土の水田に稲わら全量還元すると、土壌中全室秦及び可給態窒素含量は維持できるが、全炭素含量は低下する。


生産環境研究所・化学部・土壌管理研究室 [連絡先]092−924一2939
[部会名]生産寡境 [専門]土壌 [対象]稲類 [分類]指導


[背景・ねらい]

近年、堆きゅう肥等の有機物や土壌改良資材の施用が減少する傾向にあり、農耕地土壌の地力の低下が懸念されている。そこで、肥沃度が高く、排水良好な砂壌土の水田において、化学肥科のみを連用した場合の土壌理化学性の推移と、稲わら全量還元とおがくず入り牛ふん堆肥及びケイカルの連用効果について明らかにする。

[成果の内容・特徴]

1 肥沃度が高く、排水良好な砂壌土の水田において、化学肥料のみを連用すると、土壌中の全炭素及ぴ可給熊ケイ酸含量が低下する(図1)。
2 稲わらを全量還元すると、土壌中の全窒素及び可給態窒素含量は維持できるが、全炭素及び可給態ケイ酸含量は低下する(図1)。
3 おがくず入り牛ふん堆肥を10a当たり2t連用すると、土壌中の全窒素及び可給態窒素含量は高まるが、可給態ケイ酸含量は低下する(図1)。
4 稲わら全量還元とともに、10a当たりおがくず入り牛ふん堆肥2t、ケイカル140sを連用すると、土壌中の全窒素、可給態窒素及び可給態ケイ酸含量が高まる(図1)。 5 おがくず入り牛ふん堆肥を10a当たり2t連用、または稲わら全量還元とともに、10a当たりおがくず入り牛ふん堆肥2t、ケイカル140kgを連用すると、水稲の収量は、化学肥料のみを連用した場合に比べて増収し(図2)、品質も同等となる(データ略)。

[成果の活用面・留意点]

1 水稲施肥基準に登載し、土づくり対策の基礎資料として活用する。
2 排水良好な砂壌土の水田に適用できる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:土壌環境基礎調査・基準点調査
予算区分:国庫
研究期間:平成9年度(昭和57〜平成9年)
研究担当者:酒井憲一、黒柳直彦、藤岡章、小田原孝治
発表論文等:昭和57〜平成8年度土壌環境対策事業成績書

九州・沖縄地域における基準点調査中間取りまとめ(平成9年3月)