ナスの雨よけ栽培における天敵を利用した総合害虫管理


[要約]
 ナスの雨よけ栽培において土着の捕食性天敵のヒメハナカメムシ類と選択的殺虫剤を組み合わせた総合防除によって、ミナミキイロアザミウマの被害を抑制できる。 

生産環境研究所・病害虫部・野菜花き病害虫研究室
[連絡先]  092-924-2938
園芸研究所・野菜花き部・野菜栽培研究室        
[連絡先] 092-923-4120
[部会名]  生産環境
[専門]    作物虫害
[対象]    果菜類
[分類]    普及


[背景・ねらい]
 夏秋ナス栽培では、初期生育促進と収穫期間の拡大を目的として、雨よけ栽培の導入が図られている。露地ナスでは土着捕食性天敵のヒメハナカメムシ類と選択的殺虫剤を組み合わせた総合害虫管理によって、ミナミキイロアザミウマの被害を抑制できることが明らかになっている。ところが、ビニル被覆によって害虫類やヒメハナカメムシ類などの天敵類の発生様相が変化することが考えられる。そこで、雨よけ栽培における総合害虫管理の有効性を検討するとともに、盛夏期のビニル被覆が収量に及ぼす影響も明らかにする。 

[成果の内容・特徴]
@雨よけ栽培には露地栽培と同様に土着天敵のヒメハナカメムシ類が発生する。また、盛夏期のビニル除去はヒメハナカメムシ類の発生様相に影響を与えない(図省略)。

A雨よけ栽培では盛夏期にビニルを除去すると、ビニル再被覆後にミナミキイロアザミウマによる被害が露地に比べると増加する。しかし、ビニル再被覆後に殺虫剤散布することにより、被害果率を約10%に抑制できる(図省略)。

B 7月下旬から 8月下旬までビニルを除去すると、収量の増加が期待される(表省略)。

[成果の活用面・留意点]
@ヒメハナカメムシ類に影響の少ない選択的殺虫剤の中には蚕に影響が強いものがあるため、使用の際には関係機関に問い合わせる。

Aミナミキイロアザミウマ以外にも、果実を加害しない土着アザミウマ類が葉上に発生し肉眼では識別できないので、被害果率をもとに防除の要否を決める。

Bミナミキイロアザミウマ以外の害虫類に対しても、ヒメハナカメムシ類に影響の少ない選択的殺虫剤を使用する。

C収量については雨の少ない高温年の試験であり、更に検討を要する。


[具体的データ]






[その他]
研究課題名:野菜類の生態系活用による生産技術の確立、野菜類の生態系活用による生産技術の体系化
予算 区分:県特
研究 期間:平成7年度 (平成6〜7年)
研究担当者:嶽本弘之・大野和朗・満田幸恵・山本幸彦
発表論文等:平成6〜7年度生産環境研究所・病害虫部・野菜花き病害虫研究室成績書、平成7年度園芸研究所・野菜花き部・野菜栽培研究室成績書