捕食性天敵を利用した露地ナスでの総合害虫管理


[要約]
 露地ナスにおいて土着の捕食性天敵のヒメハナカメムシ類と選択的殺虫剤を組み合わせた総合防除によって、ミナミキイロアザミウマの発生と被害を抑制し、防除回数を大幅に低減できる。

生産環境研究所・病害虫部・野菜花き病害虫研究室
[ 連絡先 ] 092-924-2938
[部会名]  生産環境
[専門]    作物虫害
[対象]    果菜類
[分類]    普及


[背景・ねらい]
  ナスの主要害虫であるミナミキイロアザミウマに対して有効な殺虫剤は少ない。しかし、それに替わる効率的な防除手段もないことから、化学防除に依存せざるをえないのが現状である。そのため、ミナミキイロアザミウマの防除はナス生産者にとって経済的にも労力的にも大きな薗Sとなっている。一方、露地ナスでは土着の捕食性天敵ヒメハナカメムシ類がミナミキイロアザミウマの重要な密度抑制要因となることが明らかにされている。そこで、露地ナス圃場を含む農生態系に生息するヒメハナカメムシ類を活用した環境保全型の害虫管理技術を現地圃場で実証する。

[成果の内容・特徴]
@非選択的殺虫剤が頻繁に散布される慣行防除ではほとんどヒメハナカメムシ類の定着は認められない。一方、選択的殺虫剤を使用する総合防除では場所や年次に関わらず、 6月下旬から 7月上旬にヒメハナカメムシ類の定着が認められる(図 省略)。

A慣行防除では頻繁な殺虫剤散布によってもミナミキイロアザミウマ密度は十分に抑制できない。一方、総合防除ではミナミキイロアザミウマ密度はヒメハナカメムシ類と選択的殺虫剤の組み合わせにより顕著に抑制される(データ略)。

B総合防除では慣行防除より少ない防除回数で、被害果の発生を低く抑えることができる。ただし、露地ナスと施設ナスが混作される地域(立花町、黒木町および上陽町)では、ミナミキイロアザミウマの定着が早く定着量も多いため、被害抑制効果がやや劣る(表1)。

[成果の活用面・留意点]
@ヒメハナカメムシ類に影響の少ない選択的殺虫剤の中には蚕に影響が強いものがあるため使用の際には関係機関に問い合わせる。

A施設ナスとの混作地帯では、ミナミキイロアザミウマの定着時期に当たる 7月中下旬に重点的に防除し、初期密度を抑制する必要がある。

B露地ナスではミナミキイロアザミウマ以外に、果実を加害しない土着のアザミウマ類が葉上に発生し肉眼では識別できないので、被害果率をもとに防除の要否を決める。

C露地ナスで発生する他の害虫に対しても、選択的殺虫剤を使用する。


[具体的データ]




[その他] 
研究課題名:野菜類の生態系活用による生産技術の確立  ナスのミナミキイロアザミウマに対する天敵昆虫の利用技術
予算 区分:県特
研究 期間:平成7年度(平成3〜7年)
研究担当者:嶽本弘之、大野和朗
発表論文等:福岡農総試研究報告14(1995)p104〜109.  Proceeding of International Workshop on the Pest Manegiment Strategies in Asian Monsoon agroecosystems (1996、印刷中)・Applied Entomology and Zoology(投稿中)