低塩漬物の微生物制御方法


[要約]
 低温・pH・浸透圧を組み合わせることにより、塩分8%以下、pH4.0以上でも微生物による漬け液の濁りを防止できる。グルコース、エタノールを添加する場合、各濃度における浸透圧値を保存性の指標として用いることができる。酢酸は静菌効果が高く、0.1%の添加で微生物による濁りの発生を防止することができる。

生産環境研究所・流通加工部・農産加工研究所
[連絡先] 092−924−2939
[部会名] 生産環境
[専門]   加工利用
[対象]  葉菜類及び果菜類
[分類]    普及


[背景・ねらい]
 漬物の低塩志向が進む中、その品質保持技術が重要な課題となっている。しかし、実際の漬物の種類は多く、変敗防止・低温技術についてもそれぞれで異なる。そこで、品質低下に関与する微生物を用い、その生育に及ぼす塩分濃度、pHの影響などを明らかにし、低塩漬物における微生物制御方法の基礎的な指標を作成する。

[成果の内容・特徴]
@微生物による濁度の増加を防止するための漬け込み条件は、塩分8%(浸透圧57.4atm)以上、またはpH4.0以下である(図1,pHに関するデータは略)。

A塩分8%以下、またはpH4.0以上でも低温・pH・塩分(浸透圧)を組み合わせることにより漬け液の濁度増加を防止できる(表1)。

Bグルコース及びエタノールを添加する場合、各添加濃度から算出した浸透圧値は、NaClの浸透圧値と同等に保存性の指標として用いることができる(表2)。

C酢酸は静菌効果が非常に高く、0.1%(pH4.5)で濁度の増加が防止でき、0.4%(pH4.0)で大腸菌が生菌として検出されなくなる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
@E.coli(IFO 3301)を用いた試験結果であり、低塩漬け物一般における微生物制御に基礎的指標として広く用いることができる。

A長期保存(7日以上)する場合は、さらに高浸透圧、低pH、加熱処理などの併用が必要である。

B原料は十分洗浄し、初発菌数をできるだけ少なくする。

C低塩漬け物は10℃以下で保存・販売することが衛生規範により規定されている。


[具体的データ]



 注)@引用:小川ら。東京農試研報第8号
   A30℃における浸透圧値

  表1 保存温度、塩分濃度、pHが濁度の増加に及ぼす影響(平成5年、6年)

 注)@保存7日目調査
   A+:濁度増加(O.D.660=0.05以上)


  表2 NaCl代替物質としてのグルコース及びエタノールの効果(平成5年)

  注)@各区とも濁度の増加なし
    A15℃7日間保存後調査


  表3 酢酸の添加が濁度及び生菌数に及ぼす影響(平成5年)

  注)@15℃保存、7日目調査
    A±:30cfu/ml以下、ND:検出されず



[その他]
研究課題名:減塩浅漬け漬け物の製造及び保存中における微生物制御技術の開発
予算 区分:県単
研究 期間:平成6年度(平成3〜6年)
研究担当者:馬場紀子、山下純隆、深堀奈保子