福岡県における農業用水路の水質

 [要約]福岡県内における1996〜1998年の農業用水路の水質は、全窒素濃度及び化学的酸素要求量で農業用水基準を超える割合が高く、地域間差も見られる。また、1986〜1988年、1991〜1993年の調査と比較して増加しており、有機性の汚濁が進行している。
 
                        
生産環境研究所・化学部・公鉱害研究室   [連 絡 先] 092-924-2939
                              
[部会名]生産環境  [専門] 環境保全 [対象]  水 稲  [分 類]行 政
 
[背景・ねらい]
 都市近郊の農村地域では、混住化の進展及び生活様式の多様化に伴い、農業用水の汚濁が進行している。1991〜1993年(二巡目)の福岡県内農業用水路水質調査では、すべての農林事務所管内で全窒素(T−N)の平均が農業用水基準を超過しており、筑後農林事務所管内では化学的酸素要求量(COD)の平均が基準値を超えていた。また、1986〜1988年(一巡目)の調査と比較すると、T−N、CODともに増加傾向にあり、全般的に水質悪化が懸念された。そこで、水稲作付け期間中(代かき期、移植期、幼穂形成期、穂ばらみ期及び登熟期)における農業用水路の汚濁の実態を定期的に調査する。
 
[成果の内容・特徴]
 1 T−Nは、全調査回数(232回)のうち農業用水基準値(1mg/L以下)を満たすのは13%である。特に、筑後農林事務所管内では、すべての調査で基準値を超え、平均値も最も高い(図1)。
 2 CODは、全調査回数のうち農業用水基準(6mg/L以下)を満たすのは54%である。特に、筑後、飯塚及び八幡農林事務所管内では、平均値も基準値を超えている(図2)。
 3 同一調査地点における巡ごとの変化では、T−N、CODはともに一巡目、二巡目と比較して増加しており、有機性の汚濁が一層進行している(図3)。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 行政指導上の基礎資料となる。
 2 T−N及びCODが高いかんがい水を用いる場合は、中干しや間断かん水を十分に行うとともに、生育状態によって追肥の調整を行う。
 
[具体的データ]
 
 
[その他]
研究課題名:農業用水路水質調査
予算区分:国庫
研究期間:平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者:水田一枝、平野稔彦、許斐健治、角重和浩
発表論文:なし