環境保全型稲作におけるアカウキクサの利用

 [要約]アカウキクサは、水稲移植直後に1u当たり20〜40gを投入すると約3週間で田面を覆い尽くし、一年生カヤツリグサや一年生広葉雑草の発生を抑制する。また、中干し期に枯死させると穂肥1回分の窒素を供給することができる。

生産環境研究所・生物資源部・微生物利用研究室  [連絡先]092 - 924 - 2970
 
  [部会名]生産環境   [専門]土 壌   [対象]稲 類   [分類]指 導
 
[背景・ねらい]
 アゾーラ(アカウキクサ、オオアカウキクサ)は、繁殖力が強く短期間で田面を覆い、ラン藻と共生して窒素を固定することから、除草剤や化学肥料の使用を削減する環境保全型稲作への活用が期待されている。県南部に自生するオオアカウキクサの利用法については既に明らかにした(平成6、7および8年度農業関係試験研究の成果)。ここでは、県北部に自生するアカウキクサの利用法について検討する。(要望機関名:北筑前普(H9))
 
[成果の内容・特徴]
1 アカウキクサは、水田投入時に10a当たり20〜40s必要である。20sのアカウキクサを得るため には、20gのアカウキクサを約10uの水田で約3週間増殖させる(データ略)。
2 アカウキクサは、オオアカウキクサと比較して初期の繁殖力はやや劣るが、投入3週間後の増殖量は同じである(図1)。
3 アカウキクサは、1u当たり20gを投入すると投入後約3週間で、40gでは約2週間で田面を覆い尽くし、オオアカウキクサと同様に一年生カヤツリグサやその他一年生広葉雑草の発生を抑制するが、ヒエや多年生雑草のミズガヤツリについては抑制効果が期待できない(表1)。
4 アカウキクサの無機成分量は、オオアカウキクサと同等で(データ略)、1u当たり20〜40gを投入し中干し期に枯死させると、オオアカウキクサと同様に穂肥1回分に相当する窒素を供給する ことができる(表2)。
5 アカウキクサを利用して栽培した水稲の生育や収量は、手取り除草した水稲と同等である(表2)。
 
 
[成果の活用面・留意点]
1 「環境にやさしい稲づくりーアゾーラの利用指針」として利活用できる。
 
[具体的データ]
 
 
[その他]
 研究課題名:微生物による未利用資源の有効化
 予算区分:経常
 研究期間:平成10年度(平成9〜10年)
 研究担当者:山村裕一郎、大森 薫
 発表論文等:平成9〜10年度 生産環境研究所生物資源部試験成績概要書