フリーストール式牛舎における、ふん尿一括処理システムの能力と堆肥の調整法


[要約]フリーストール式牛舎において、ショベルローダ、バーンクリーナ、油圧パイプによりふん尿混合物を、畜舎外の発酵乾燥舎に搬出するシステムは、1頭当たりふん尿処理時間は2分と短い。しかし、水分合量が85%と高いため、良質堆肥を作るためには、オガクズやモミガラ等でふん水分を70%程度に調整する必要がある。


畜産研究所・中小家畜部・環境衛生研究室 [連絡先]092−922−4100
[部会名]畜産 [専門]環境保全 [対象]家畜類 [分類]指導


[背景・ねらい]

乳牛の飼養規模が拡大する中で、飼養管理の省力化を目的としたフリーストール式の牛舎が増加し、ふん尿処理体系も変わりつつある。そこで、フリーストール式牛舎におけるふん尿処理システムの一方式として、ふん尿混合物を一括して畜舎外に搬出し、発酵乾燥舎で堆肥化するシステムの特長を明らかにするとともに良質堆肥生産技術を薩立する。

[成果の内容・特徴]

1「牛舎→ショベルローダ→バーンクリーナ→油圧パイプ→発酵乾燥舎→ショベルローダ→堆肥舎」というふん尿処理システムでは、牛舎内のふん尿を一度も舎外に持ち出すことなく、省力的に処理できる特長がある。また、油圧バイブはふん尿の水分合量の変動が大きい場合(70%〜90%)でも、ふん尿の搬送がスムーズにできる長所がある(図1)。
2 成牛40頭規模での、1日当たりの処理ふん尿量は約1,900s(水分合量:約84%)で、これに要するふん尿処理時間は約1時間20分である。成牛1頭当たりのふん尿処理時間は2分と短い。また、ふん尿搬出時間はショベルローダでバーンクリーナに落とし込むだけであるため、わずか15分であり、全ふん尿処理時間の約20%程度である(表1)。
3 モミガラ、オガクズ、モミガラ+オガクズ等でふん尿の水分合量を70%程度に調整すると、発酵乾燥舎における堆肥の発酵温度は、数日後には約65℃〜69℃まで上昇し、一次発酵は良好である(表2)。
4 堆肥の水分合量はいずれの区も65%前後、乾物当たりの窒素含量、りん酸含量、加里含量は乳牛堆肥としては平均的な肥料成分合量である。また、C/N比は19〜27程度で良好である(表3)。

[成果の活用面・留意点]

1 フリーストール牛舎における乳牛のふん尿処理の技術資料として活用する。
2 このふん尿処理は、尿をオガクズ等に吸着させた、いわゆるふん尿固形物を処理するためのシステムであり、牛乳処理室や待機場の洗浄水等の雑排水は、別途に処理する施設が必要である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:低コスト飼料生産技術及びフリーストール牛群管理システム
予算区分:国庫(地域基幹)
研究期間:平成9年度(平成6〜9年)
研究担当者:高線久次郎、小山太
発表論文等:平成9年度畜産関係試験成績書