近赤外分光法によるイタリアンライグラスサイレージ発酵品質の迅速評価法

[要約]イタリアンライグラスサイレージ中の有機酸組成、揮発性塩基態窒素、全窒素含量の近赤外分光法応用による迅速測定を可能とした。この測定値を用いて算出した発酵品質評価指標により発酵品質を迅速に総合評価することができる。


畜産研究所・飼料郵・家畜栄養研究室 [連絡先]092−925−5231
[部会名]畜産 [専門]動物栄養 [対象]牧草類 [分類]普及


[背景・ねらい]

サイレージの飼料価値は、栄養品質と発酵品質によって決定される。栄養品質については、近赤外分析計利用による迅速評価法を確立しつつある。発酵品質については官能評価や化学分析による有機酸含量等に基づく評価法で判定しており、多くの時間を要している。そこでサイレージの発酵品質を簡易迅速に評価するため、近赤外分光法応用の可能性について検討し、平成8年度の成果情報ではイタリアンライグラスサイレージ抽出液を近赤外分析計で測定し、酢酸+プロピオン酸及び酪酸以上の有機酸(VFA)推定が可能であることを明らかにした。さらに、サイレージ発酵品質の良否と関係する乳酸、揮発性塩基態窒素(VBN)、全窒素(T−N)及びフリーク評点の簡易迅速測定技術を開発する。

〔成果の内容と特徴]

1 イタリアンライグラスサイレージの搾汁液について、高速液体クロマトグラフィによる乳酸とVFAの同時定量分析結果を用いて乳酸、及びC2+C3,C4以上のVFAを測定する検量線を作成した。この検量線による測定値は、公定法よる定量値との相関が高く、実用性が認められる(表1)。
2 また、搾汁した液体中のVBN,pHの検量線の測定精度についても、定量値との相関が高く、実用性が認められる(表1)。
3 乾燥粉砕したサイレージサンプルのT−N含量を近赤外分析計で測定した精度も、同様に、定量値との相関が高く、実用性が認められる(表1)。
4 サイレージサンプルの搾汁液を用いて乳酸、C2+C3,C4以上のVFA、VBN、phの5成分を同時に90秒で迅速に測定することができる(図1)。
5 近赤外分析計を用いて、乾燥粉砕したサンプルで測定したT−N及び粉体中水分と、搾汁液で測定値した有機酸、及びC2+C3とC4以上のVFAから、総合評価の指標であるフリーク評点とVBN/T−Nを算出できる(図1)。算出した評価指標値は水分含量が50%上のサイレージでフリーク評点とVBN/T−Nがそれぞれ相関が高く、中水分から高水分のサイレージで精度が高い(表2)。

[成果の活用面・留意点]

1 畜産研究所で実施しているフォーレージテストの中で活用する。
2 乳酸、ギ酸等以外の添加物を使用したサイレージには適用できない。
3 水分50%程度以上のサイレージの評価に用いると推定席度は高い。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:サイレージの発酵品質分析技術
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成7〜9年)
研究担当者:梅田剛利、今村弘子、棟加登きみ子、大石登志雄
発表論文等:平成9年畜産関係試験成績書