α−リノレン酸を活用した高付加価値豚肉生産


[要約]
 α−リノレン酸を豊富に含むアマニ油けん化物 2%を肥育豚に出荷前28 日間程度給与すると、豚肉の背脂肪及びロース中のα−リノレン酸は約 3倍に増加する。また、肉の色も異なる。

畜産研究所・中小家畜部・養豚研究室
[連絡先]   092-922-4100
[部会名]   畜産
[専門]    飼養技術
[対象]    家畜類
[分類]    普及


[背景・ねらい]                             
 アレルギー体質の改善、循環器等の成人病の予防効果があるとされるα−リノレン酸を多く含むアマニ油脂肪酸カルシウム(アマニ油けん化物)を肥育豚に給与し給与時からと殺までの発育性や脂肪酸の移行状態、豚肉の理化学的性状を調査し、高付加価値豚肉生産技術を確立する。なお、給与期間については、九州農試の成果(平成2年度)より4週間とする。                                                          

[成果の内容・特徴]                           
@給与飼料を通常の配合飼料からアマニ油けん化物飼料に切り替えると、最初の 2 週間はエネルギー摂取量が増加するため、増体量は良くなり飼料要求率も向上する。その後、過剰のエネルギー摂取量を飼料摂取量で調節するため、飼料摂取量が少なくなり増体量が減少する。(表1)。

A肥育豚の背脂肪中の脂肪酸組成は発育に伴い、飽和脂肪酸の割合が増加し、不飽和脂肪酸は減少するため、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比(U/S比)が低くなる。しかし、アマニ油けん化物を28日間給与すると、不飽和脂肪酸中の n-3系列脂肪酸が増えるので n-6/ n-3比が低くなる。特にα−リノレン酸(C18-3)は背脂肪ロースともに移行し,背脂肪とロースで約 3倍増加する。 2%給与と 4%給与では脂肪や肉への移行割合に差がない(表2)。                 

B豚肉の理化学的性状ではほとんど差がないが、アマニ油けん化物を給与量すると肉の色差は異なる傾向にあり、感知可能である(表3)。              

[成果の活用面・留意点]                         
高付加価値豚肉の生産に役立てる。                        


[具体的データ]  

                  表1 給与期間中の発育性         (平成6年)

   注)@給与開始平均体重は90.9s、と殺平均体重111.7s
     Aアマニ油けん化物の給与期間は28日間


        表2 背脂肪およびロースの脂肪酸の組成      (平成6年)

 注)@n−3:C18−3リノレン酸 C22−6 ドコサヘキサエン酸
   An−6:C18−2リノール酸C20−4アラキドン酸


            表3  豚肉の理化学的性状          (平成6年)

 注)@対照区との色差△E*ab=/√(△L*)2+(△a*)2+(△b*)2
   A色差の評価:1.5〜3.0 感知し得るほど異なる、3.0〜6.0 著しく異なる


[その他]  
研究課題名:豚肉の高付加価値化  
予算 区分:経 常  
研究 期間:平成6年度(平成5〜6年)  
研究担当者:佐藤充徳、山本英二、大和碩哉、投野和彦  
発表論文等:平成6年度畜産関係試験成績書