福岡県における乳牛の泌乳曲線の特徴

[要約]本県における乳牛の泌乳曲線は、泌乳水準別では水準が低いほど分娩後の泌乳ピ−ク到達日が早い。産次別では、初産次の泌乳ピ−クは27.3kgと他の産次に比べて低く、その後の乳量減少は緩やかである。分娩季節別では、305日乳量において季節による差は認められない。

畜産研究所・大家畜部・乳牛研究室 [連絡先]092-925-5231
[部会名]畜 産 [専 門]飼育管理 [対象]家畜類 [分類]指導

[背景・ねらい]

乳牛において1乳期の乳量を示す泌乳曲線は、個体の能力評価や出荷乳量予測による飼養管理改善等の指標として活用できることから、西南暖地に位置する本県の泌乳特性に良く適合する五次回帰泌乳曲線を用いて、泌乳水準、産次及び分娩季節別の泌乳パタ−ンを明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@福岡県で平成5〜6年に実施した乳用牛群検定成績を用いて、泌乳水準、産次及び分娩季節別に五次回帰泌乳曲線を作成した(図1、図2、図3、表1、表2、表3)。

A泌乳水準別の泌乳曲線では、泌乳水準が低いほど開始時乳量及び泌乳上昇率も低く、また、分娩後の泌乳ピ−ク到達日も速まる(図1、表1)。

B産次別の泌乳曲線では、初産次における泌乳ピ−ク到達日は分娩後57日であるが、2産次では48日と早まり、その後、産次が進むほど遅れる傾向である。また、初産次の泌乳ピ−ク乳量は27.3kgと他の産次に比べて低く、2産次になると初産次に比べて泌乳ピ−ク乳量で20.9%、305日乳量で10.7%高い(図2、表2)。

C分娩季節別の泌乳曲線では、4〜6月分娩の泌乳ピ−ク乳量が29.8kgと他の分娩季節に比べてやや低いが、305日乳量においては分娩季節による差は認められない(図3、表3)。

[成果の活用面と留意点]
@要因別の泌乳曲線と酪農家の泌乳成績を比較することにより、乳牛の能力評価や選抜淘汰の判断資料として活用する。

A2産次において、初産次に比べ泌乳ピ−ク乳量及び305日乳量の向上が見られない個体は、飼養管理の見直しを行うとともに、選抜個体から外すことを検討する。

B分娩季節別の305日乳量には大きな差は認められなかったが、夏期の牛乳増産を図るためには防暑対策が重要である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:要因別泌乳曲線の作成
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成7〜8年)
研究担当者:古賀康弘、山下克之、柿原孝彦、小島雄次、上田允祥
研究論文等:平成8年度畜産関係試験成績書