待機室内での乳牛への肢蹄散水によるミルキングパーラー内の排ふん軽減

[要約]
 ミルキングパーラーへの入室開始直前の搾乳牛群(20頭程度)に対して、待機室内で全頭一斉に肢蹄散水すると、排ふんが誘起され、パーラー内の排ふん頻度を約1/2に減少させることができる。

畜産研究所・大家畜部・乳牛研究室  [連絡先]092-925-5232
[部会名]畜  産  [専 門]飼育管理 [対 象]家畜類  [分類]普 及
[背景・ねらい]
 ミルキングパーラーは、日常の清掃・水洗等により衛生的な搾乳環境を保持する必要がある。しかし、搾乳時に乳牛が排ふんした場合、落下したふんが飛散するため、搾乳衛生上好ましくない。また、乳牛より一段低いピットで搾乳する作業者に強い不快感を与える。乳牛の排ふんは、採食の後や起立直後に多いとされているが、待機室やミルキングパーラーでの排ふん行動に関する報告は少なく、簡易に排ふんを制御する技術も確立されていない。
 そこで、3頭複列の自動開閉式タンデムパ−ラ−において、搾乳前の待機時間の違いによる牛群の排ふん行動を調査するとともに、待機室内における搾乳牛肢蹄への散水(以下、肢蹄散水という。)による排ふん軽減効果について明らかにする。
 
[成果の内容・特徴]
 1 牛舎から待機室への追い込み終了後、最後の搾乳牛がパーラーへ進入するまでの時間(最大待機時間)が長くなるに従って、待機室内での排ふん頻度(排ふん延べ頭数/搾乳頭数)は直線的に増える。一方、パ−ラ−内の排ふん頻度は、約25%とほぼ一定である(図1)。
 
 2 20頭程度の搾乳牛群に対して、パーラーへの入室開始直前に全頭一斉に肢蹄散水すると、その直後に排ふんが誘起され、待機室内の排ふん頻度が高くなり、パーラー内の排ふん頻度は、肢蹄散水しない場合の約1/2に減少させることができる(図2)。
 
 3 肢蹄散水を行ってから、パーラーへの入室開始までに30分が経過した牛群には、パーラー内での排ふん頻度軽減効果はみられない(図2)。
 
 4 肢蹄散水により、後片付けの際の待機室内の洗浄水量は増加するが、パーラー内の洗浄水量は減少傾向であり、全体の洗浄水量はほぼ同等である(表1)。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 ミルキングパーラー内における衛生的な搾乳環境の保持技術として活用できる。
 2 肢蹄散水を行う場合、市販の散水ノズルを用いるとよい。また、肢蹄散水は、1頭毎ではなく、牛群単位で行う。搾乳牛20頭程度であれば、肢蹄散水約30秒間・休み約30秒間を2回程度繰り返す。
 3 搾乳牛頭数が多く、最大待機時間が1〜2時間の場合、30分毎に肢蹄散水を行う。
 4 肢蹄散水に際しては、乳房炎発生予防の面から、乳房に水がかからないようにする。
 
[具体的データ]
 
[その他]  
 研究課題名:大規模高能率酪農技術の実証試験
 予算区分:国庫(地域基幹)
 研究期間:平成10年度(平成9〜10年)
 研究担当者:古賀康弘、磯崎良寛、柿原孝彦、原田美奈子
 研究論文等:平成9、10年度畜産関係試験成績書