ブドウ「巨峰」の展葉初期における黒とう病及び枝膨病の効率的防除体系

[要約]ブドウ「巨峰」の生育初期に発生する黒とう病及び枝膨病に対して、展葉2〜3枚頃(4月中〜下旬)にジチアノンフロアブル、展葉6〜8枚頃(5月上〜中旬)に有機銅フロアブル、さらに落花直後(5月下旬)にクレソキシムメチルドライフロアブルを散布すると、休眠期防除を省いても高い防除効果が得られる。

生産豪境研究所・病害虫部・果樹病害虫研究室[連絡先]092−924−2938
[部会名]園芸 [専門]作物病害 [対象]果樹 [分類]普及

[背景・ねらい]

現在、ブドウ「巨峰」の生産地では生育初期における黒とう病及び枝膨病の防除体系の一環として、休眠期(4月上旬頃)に殺菌剤の高濃度散布が実施されている。しかし、現行の休眠期防除は、5月上旬から感染が始まる枝膨病に対する効果は低いうえ、殺菌剤の高濃度散布が行われているため、経費及び農薬の環境への負荷増大の点でデメリットが多い。そこで、新しく開発された農薬を使用し、両病害の感染時期を考慮した効率的かっ効果の高い防除体系を確立する。

[成果の内容・特徴]

1 休眠期防除を実施しなくても、展葉2〜3枚頃(4月中〜下旬)にデランフロアブルを散布することで黒とう病に対して高い防除効果淡得られる(表1)。
2 休眠期防除を省いた、展葉2〜3枚頃(4月中〜下旬)にデランフロアブル、展葉6〜8枚頃(5月上〜中旬)にキノンドーフロアブル、落花直後(5月下旬)にストロビードライフロアブルの組み合わせ散布で、黒とう病及ぴ枝膨病に対して高い防除効果が得られる(表2)。

[成果の活用面・留意点]

1 県病害虫防除基準に掲載し、本防除体系の普及を図る。
2 第1回目の散布時期である展葉2〜3枚目頃の防除は特に重要なので、時期を失しないようにする。
3 休眠期防除を省いた本防除体系の、晩腐病及び褐斑病に対する効果は不明である。 4 本防除体系は生育初期の防除に関するものであり、6月上旬以降は慣行防除に準じて黒とう病及び枝膨病に対する防除を実施する必要がある。



[その他]
研究課題名:新農薬の効率的使用法
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(昭和40年〜継)
研究担当者:梶谷裕二、大平善男
発表論文等:平成9年度福岡県農業総合試験場病害虫部果樹病害虫関係試験成績概要書