福岡県におけるウメ新品種「八郎」、「加賀地蔵」の特性

[要約] ウメ品種「八郎」は自家和合性で結実が安定し、豊産性の小ウメである。「加賀地蔵」は自家和合性はないが収量が安定し、品質の良い大ウメである。開花期はいずれも「南高」と「白加賀」の中間で、収穫期は「南高」と同期である。

園芸研究所・果樹部・落葉果樹研究室 [連絡先]092-922-4111
[部会名]園 芸 [専門]栽 培 [対象]果樹類 [分類]普及

[背景・ねらい]

ウメは果実の大きさで小ウメと中〜大ウメに分類できる。本県では小ウメは需要は多いが収量が少なく、大ウメでは品質、収量共に優れた品種が少ない。そこで、高品質で収量が安定し、本県に適する品種を選抜するため、農林水産省で育成されたウメの第1回系適供試品種の中から、有望と思われる「八郎(筑波2号)」、「加賀地蔵(筑波6号)」の特性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1) 八郎
@樹勢は弱め、枝の発生密度は中程度で、短果枝の着生、花芽の着生及び花粉は多い。自家和合性が認められ、生理落果は少なく、結実は安定して豊産性である(表1)。
A1果実重は12.6gで「南高」より約5g小さく、やや大きめの小ウメである。玉揃いは良いが、核重率が16.6%と果実に対する種子の割合がやや大きい(表2)。
B開花期は2月19日〜3月10日で、「南高」より遅く、「白加賀」より早い(図1)。
C収穫期は6月8日〜12日で、「南高」と同時期である(図2)。
2) 加賀地蔵
@樹勢はやや弱め、枝の発生密度及び花芽の着生は中程度であるが、短果枝の着生は多い。
花粉の量及び生理落果は中程度であるが、収量は安定している(表1)。
A1果実重は23.6gで「白加賀」と同程度の大ウメである。玉揃いは良く、核重率が12.1%と果肉の割合も多い(表2)。ウメ干しでの品質が良い(データ略)。
B開花期は2月18日〜3月11日で、「南高」より遅く、「白加賀」より早い(図1)。
C収穫期は6月7〜12日で、「南高」と同時期である(図2)。

[成果の活用面・留意点]
@福岡県の果樹奨励品種の解説に記載し、技術資料として活用する。
A「八郎」「加賀地蔵」とも黒星病り病性のため、防除を徹底する。
B「加賀地蔵」は収穫後に陥没症が発生しやすいため早取りを避け、適期の後半収穫する。
C「加賀地蔵」は自家和合性がないため、開花期が同一時期の品種と混植する。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:育成品種系統適応性試験 ウメ
予算区分 :経常
研究期間 :平成8年度(昭和60年〜平成8年)
研究担当者:林公彦、牛島孝策、千々和浩幸
発表論文等:昭和62年〜平成8年果樹関係試験成績書、系適検討会資料