透湿性シートのマルチによるカキ果実の品質向上


[要約] 収穫前20〜45日間の透湿性シートのマルチによって、カキ果実の着色が促進され、収穫期が早くなる。特に、標高が高く収穫期の遅い地域で着色促進効果が高い。     

園芸研究所果樹部落葉果樹研究室
[連絡先] 092-922-4111
[部会名] 果樹
[専門]  栽培
[対象]  果樹類
[分類]  指導


[背景・ねらい]
 本県のカキは、大玉で着色に優れることから市場評価が高く、有利な販売を展開してきた。しかし、露地栽培が主体であるため、果実肥大、着色及び糖度等の果実品質は気象の影響を受けやすく、着色不良や糖度低下を来たす年もある。そこで、マルチ資材を用いて収穫前の土壌水の制御を行い、果実品質の向上及び安定化技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
@透湿性シートを用いた収穫前約45日間のマルチは、収穫時期の土壌pF値を2.8付近まで安定的に高め(図1)、カキの葉の水ポテンシャルは−0.8〜−1.0MPaまで低くなる。その結果、果実糖度が上昇するが、果実肥大への影響は少ない(表1)。

A収穫前20〜45日間の透湿性シートのマルチは、カキ果実の果皮の着色促進に有効で(表1)、収穫期が3日程度早くなる(図2)。

B透湿性シートのマルチによる着色促進効果は、標高が高く収穫期が遅い地域のほうが収穫期の早い平坦地より高く、これらの地域では0.7%程度の糖度上昇効果もみられる(表1、図2)。

[成果の活用面・留意点]
@標高が高く、収穫期の遅い地域での着色促進のために使用する。

A透湿性シートのマルチ期間は収穫前20〜45日間とし、資材は経済性を考慮して2〜3年使用する。


[具体的データ]


     
図1 透湿性シートのマルチと土壌pF値の推移(平成6年)  図2カキ’富有’の透湿性シートマルチと累積収穫果率(平成5年)
    注)9月28日マルチ処理                注)試験区は表2に対応


 表1 カキ’富有’の透湿性シートマルチ処理と果実品湿(平成5,6年)


 注)@吉井町現地ほ場。1993年は11月8日、1994年は11月20日
    に収穫調査。
   A透湿性シートはタイペックを全面被覆。
   B果径肥大率はマルチ処理時点の果径に対する収穫時の果径の割合。
   C*5%、**1%レベルで有意、NS有意差無し。


[その他]
研究課題名:カキのマルチ栽培
予算 区分 :経常
研究 期間 :平成6年度(平成4〜6年)
研究担当者:林公彦、牛島孝策、千々和浩幸、姫野周二、吉永文浩、恒遠正彦
発表論文等:平成4〜6年果樹関係試験成績書