福岡県におけるカキ新品種「太秋」の特性


[要約] 
 農林水産省で育成されたカキの新品種「太秋」は、本県のカキの主要品種である「富有」に比較して1果重が大きく、糖度も高い。また、収穫期は「富有」の前半と重なるが、「富有」の盛期までに終わる完全甘柿で、有望品種である。
        
園芸研究所果樹部落葉果樹研究室
[連絡先] 092-922-4111
[部会名]  園芸
[専門 ]   栽培
[対象]    果樹類
[分類]    普及


[背景・ねらい]
 現在、県内で栽培されているカキの主要4品種に替わる品種として、大果で高糖度の完全甘柿の選抜が望まれている。このため、農林水産省で育成され、本県における適応性を検討したカキの第4回系統適応性検定試験供試品種の中から、有望と思われる「太秋」の特性を明らかにる。

[成果の内容・特徴]
@樹の開帳性、枝の発生密度は中程度で樹勢はやや弱い。雄花が僅かに着生する。

A開花盛期は5月25日で、「伊豆」、「松本早生富有」、「富有」より1〜2日早く、「西村早生」より5日遅い(図1)。

B果実糖度は18.4%と、「松本早生富有」や「富有」より2%程度高い(表1)。肉質は多汁で、さくさくした独特の歯触りである。含核数はやや少ないが、1果重が334gで大果の完全甘柿である(表1)。

C果頂部付近に条紋が発生し、収穫期に近づくにつれ条紋が黒変したり、雲形状の汚損が発生しやすい。汚損果率は、「松本早生富有」や「富有」と比較して明らかに高く(表1)、「伊豆」よりもやや高い(データ略)。

D収穫盛期は11月18日で「松本早生富有」より8日遅く、「富有」より3日早い(図2)。収穫間際の果皮の色はやや黄色みを帯びており、「松本早生富有」や「富有」の様な紅色にはなりにくいため、収穫時期を逸しやすい。

E樹勢が弱く高接ぎ初期の樹冠拡大が遅れ「富有」より初期収量が少ない。また隔年結果により収量がやや不安定である(表1、一部データ省略)。

[成果の活用面・留意点]
@福岡県の果樹奨励品種の解説に搭載し、技術資料として活用する。

A収穫期が遅れると汚損果が発生しやすくなるため、発生防止のため適期収穫に努める。

B隔年結果を防止及び収量安定のため、強めのせん定を行い樹勢の維持、強化に努める。


[具体的データ]

 表1 果実品質及び収量の年次推移

 注)@全品種とも、平成元年3月に松本早生富有に高接ぎ。
   A果実糖度は屈折計示度による。
   B汚損果率、収量は平成4〜6年の平均値。



  図1 カキ主要品種の開花期(平成2〜6年)



  図2 カキ主要品種の収穫期(平成2〜6年)


[その他]
研究課題名:カキ育成品種適応性試験 
予算 区分 :国庫(系統適応性試験)
研究 期間 :平成6年度(平成2〜6年)
研究担当者:千々和浩幸、林公彦、牛島孝策、姫野周二、吉永文浩、恒遠正彦
発表論文等:平成2〜6年度果樹関係試験成績書       平成2〜6年度 果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会資料