中晩生カンキツ「天草」の高品質果実生産のための収穫適期および退色防止


[要約]
 カンキツ天草」は、県内中晩生カンキツ産地では1月中旬に全糖含量が高まって食味も向上し、収穫適期となる。果皮の退色は、袋かけ処理することで抑制され、外観良好な赤橙色の果実を生産することができる。

園芸研究所・果樹部・常緑果樹研究室     [連絡先]092-922-4111
[部会名]園芸  [専門]栽培  [対象]果樹類  [分類]普及
 
[背景・ねらい]
 「天草」は、高品質果実として生産が増加した「清見」を改良育成された、豊産性で果皮色の赤橙色が特徴の早熟の中晩生カンキツである。「清見」の前に出荷され、「イヨカン」に代わる品種として栽培が拡大中である。
 「天草」の品種特性については平成7年度農業関係試験研究成果で明らかした。しかし、栽培が普及するにつれて、減酸の早晩の地域間差、果皮の退色等がみられることから、収穫が早められる傾向がある。そこで、「天草」の主力産地である糸島において、果実品質の高まる収穫適期、退色防止技術について明らかにする。(要望機関名:福岡普(H7))
 
[成果の内容・特徴]                            
 1 果実品質は、11月下旬以降クエン酸、糖度とも変化は小さいが、12月下旬には クエン酸含量は1.0%前後、糖度は11度に達する。全糖含量は1月中旬に急激に高 まり、果肉は軟らかくなって食味が良好となる(図1、一部データ略)。着色、減酸は 「清見」よりも早く進み、成熟期は1カ月程度早い(図1、一部データ略)。
 2 袋かけをすることで果実の退色が抑えられ、1果実内の果皮色の濃淡の差が小さく なり、着色むらの小さい、果皮色が赤橙色の果実が得られる(表1)。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 福岡県栽培技術指針作成の資料とする。
 2 退色防止の袋かけに被覆用ネット(商品名サンテ)を使用すると、冬季雨天が続く 時は過湿となって果皮障害を生じることがあるので、園内の通風を良くするよう心がけ る。 
 3 かいよう病、そうか病に弱いため、施設化して生産安定を図ることが望ましい。
 4 気象条件により収穫時期が変動するので注意する。
 
[具体的データ]
 
[その他]
  研究課題名:晩生柑の品種比較
  予算区分:経常 
  研究期間:平成10年度(平成7〜10年) 
  研究担当者:松本和紀、堀江裕一郎、角 利昭、桑原 実
  発表論文等:平成10年度 常緑果樹試験研究成績概要集
        平成7〜10年度 園芸研究所果樹部果樹関係試験成績書