シクラメンの高品質生産のための葉柄中硝酸濃度の適正値

[要約]高品質なシクラメン(品種:「フォルテピンク」、「ミディ・コーラス」、5号鉢)を生産するための葉柄中硝酸濃度の適正値は生育初期から中期(6月〜9月中旬)においては品種によって異なるが、葉柄搾汁液を用いた生育後期(9月下旬以降)では両品種とも500〜1500ppmである。


生産環境研究所・化学部・作物栄養研究室 [連絡先]092−924−2939
園芸研究所・野菜花き部・花き花木研究室
[部会名]園芸 [専門]肥料 [対象]花き類 [分類]普及


〔背景・ねらい]

栽培期間の長いシクラメンにおいて適正な施肥管理を行うためには、生産現場で簡易にできる栄養診断技術の開発が求められている。窒素栄養の簡易診断のためには、葉柄搾汁液または摩砕液の硝酸濃度を測定することが適当で、簡易な測定方法について明らかにした(平成9年度成果情報)。そこで、「フォルテピンクj,「ミディ・コーラス」において液肥濃度を変えて底面給水栽培を行い、高品質な5号鉢のシクラメンを生産するための葉柄の硝酸濃度の適正値をこれら手法を用いて、生育時期別に明らかにする。

[成果の内容・特徴]

1 高品質(葉数、花蕾数が多く開花も順調。株張りは大きく小葉で葉面積のばらつきが小さい。)の5号鉢シクラメンを生産するためには、中生種の「フォルテピンク」(パステル系)では、生育初期(6月〜7月中旬)の葉柄摩砕液の硝酸濃度を1000〜2500ppm、生育中期(7月下旬〜9月中旬)の葉柄搾汁液の硝酸濃度を200〜600ppm、生育後期(9月下旬以降)を500〜1500ppmで管理する(表1)。
2 早生種の「ミディ・コーラス」(F1種)では、生育初期に葉柄の硝酸濃度を2000〜3000ppm、生育中期の葉柄搾汁液の硝酸濃度を2500〜6000ppmで管理するかまたは初期を2000〜5000pp皿、生育中期を1000〜4500ppmで管理し、生育後期の葉柄搾汁液の硝酸濃度は500〜1500ppmで管理する(表1)。

[成果の活用面・留意点]

1 地力保全測走診断の手引きおよび花きの施肥基準に登載し、底面給水栽培におけるシクラメンの窒素栄養の簡易診断法として活用する。
2 葉柄および葉柄搾汁液の硝酸濃度の測定においては、測定条件(葉柄の採取部位および天候等)に注意する。測定は1〜2週間に1回行う。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:花きの養液栽培における簡易栄養診断技術の確立
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成7〜9年)
研究担当者:井上恵子、小林泰生、兼子明、荒木雅登
発表論文等:平成7〜9年度生産環境研究所化学部春夏作試験成績概要書