ナスの雨よけ普通栽培における盛夏期の被覆資材除去が収量に及ぼす影響

ナスを被覆資材を用いて雨よけ栽培する場合、被覆期間を定植期から梅雨明け時までと、9月上旬から収穫終了時までとすることにより、栽培全期間被覆を行う場合より収量が増加する。また、梅雨明け以降のホルモン処理は、盛夏期の被覆資材の有無に関わらず不要である。

園芸研究所・野菜花き部・野菜栽培研究室 [連絡先]092-922-4111
[部会名]園 芸 [専門]栽培 [対象]果菜類 [分類]普及

[背景・ねらい]

ナスの雨よけ栽培は、綿疫病等の病害の発生を防ぐことや初期生育の促進、収穫期間の拡大を主目的に、黒木町や甘木市では3月中旬定植の雨よけ早熟栽培として定着している。しかし、定植から収穫までの全期間をビニル等の被覆資材で被覆しているため、難防除害虫の発生及び盛夏期の高温による作業環境の悪化等の問題を抱えている。
このため、本県ではこれまでに、害虫対策については梅雨明け時から8月末までの盛夏期にビニルを除去し、土着天敵を利用した総合防除技術を明らかにした(平成7年度 農業関係試験研究の成果)。
ここでは、雨よけ普通栽培を対象に、盛夏期の被覆資材の除去が圃場内の気温降下とナスの生育、収量に及ぼす影響を明らかにするとともに、省力化の面から夏秋季のホルモン処理の必要性を併せて検討する。

[成果の内容・特徴]

@圃場内の最高気温及び平均気温は、梅雨明け時から8月末まで(以下、盛夏期)は被覆資材を除去した圃場のほうが、ビニルを全期間被覆した圃場より低く推移する(図1)。
A主枝長が摘心できる長さになる時期は、盛夏期に被覆資材を除去した方が茎の伸長が早いため1週間早く、また再被覆直前の光合成速度は、盛夏期に被覆資材を除去した方が約10%高い(表1)。
B盛夏期に被覆資材を除去した場合の収量は、ビニルを全期間被覆した場合より15%程度多く、時期別に見ると被覆資材を除去した8月以降に差が大きい(表2、表3)。
C梅雨明け以降にホルモン処理を行う場合と行わない場合との比較では、果実肥大日数と収量・品質が同等であり、その傾向は盛夏期の被覆資材の有無にかかわらず変わらない(表3、一部データ略)。

[成果の活用面・留意点]

@福岡県内のナスの雨よけ栽培に適応できる。
A福岡県主要野菜の栽培指導指針に登載し、雨よけ栽培の指導資料として活用する。
B定植から梅雨明けまでは、着果促進のためのホルモン処理が必要である。
C盛夏期に曇天または雨天が続く年次における被覆資材除去の効果は明らかでない。

[具体的データ]


[その他]

研究課題名:野菜類の生態系活用による生産技術の確立 野菜類の生態系活用による
生産技術の体系化
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成6〜7年)
研究担当者:満田幸恵、山本幸彦、月時和隆
発表論文等:平成7、8年度 園芸研究所野菜花き部野菜試験成績概要書