葉ネギの葉先枯れ症の発生に及ぼす温度・かん水管理の影響

[要約]葉ネギの葉先枯れ症は管理温度によって発生程度が異なり、高温で発生が助長され生育も抑制される。また、生育後期のかん水制限により5月どりの「九条太」、7月どりの「雷山」、「九条太」では発生が助長される。

園芸研究所・野菜花き部・野菜栽培研究室 [連絡先]092-922-4111
[部会名]園 芸 [専門]栽 培 [対象]葉茎菜類 [分類]指導

[背景・ねらい]

葉ネギは本県の主要な野菜であるが、高温期に葉先枯れ症が発生し生産が不安定となることが問題となっている。これまで本県では、堆肥の多量施用により土壌が膨軟で水分ストレスがかかりやすく、塩基飽和度の高い圃場では葉先枯れの発生が多いことを明らかにした(平成4、5年度 農業関係試験研究の成果)。しかし、土壌条件が異なる圃場でも葉先枯れ症の発生が同時に見られることがあることから、生育期の温度やかん水管理が葉ネギの葉先枯れ症の発生に及ぼす影響を温度コントロールが容易なファイトトロン内でプランター栽培により検討する。

[成果の内容・特徴]
@葉ネギの葉先枯れ症は昼温30℃、夜温20℃(以下、30℃−20℃)以上の高温条件で収穫物の対象となる上位第2葉でも発生が多くなる。この傾向は35℃−25℃の方が著しい(表1)。
A生育期間が3カ月の5月どり栽培で生育中期(中間の1カ月)に 200mm、後期(後半の1カ月)にも 200mm程度の多かん水管理を行った場合、葉先枯れ症の発生は「九条太」、「雷山」とも約10%である。生育中期にかん水制限を行った場合の葉先枯れ症の発生は、両品種とも多かん水管理と同程度である。しかし、生育後期にかん水制限を行った場合は、「雷山」では発生は多かん水管理と同程度であるが、「九条太」では多かん水管理に比べ約2倍に増加する(表2)。
B生育期間が2カ月半の7月どり栽培で収穫前14日間のかん水量を極端に制限すると、「九条太」、「雷山」とも上位第3葉の葉先枯れ症が増加し、第2葉にも約20%発生する(表3)。
C葉ネギの生育は30℃−20℃以上の高温条件で極端に抑制され、草丈は短く、地上部重、地下部重ともに軽くなる(表1)。生育中期にかん水を制限すると地下部重が軽くなるが、生育後期のかん水制限では地下部重に加えて草丈、地上部重も抑制を受ける(表2、3)。また、生育後期に多かん水管理すると、葉折れの発生が増加する(表2)。

[成果の活用面・留意点]
@福岡県主要野菜の栽培指導指針に登載し葉ネギ指導資料として活用する。
A本試験はプランター利用(培土には粒状培土を使用)による栽培試験であるため、土壌条件の面からは葉先枯れ症が発生し易い条件での検討結果である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:葉ネギの葉枯れ症状の発生要因
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
研究担当者:山本幸彦、月時和隆、満田幸恵
発表論文等:平成6〜8年度 園芸研究所野菜花き部 野菜試験成績概要書