いぐさ−水稲連作田における深耕と堆肥施用によるいぐさの収量・品質向上

[要約]いぐさ−水稲体系の連作田において、いぐさ植付前に耕起深15pの深耕を行い、同時におがくず入り牛糞堆肥10a当たり2tを施用すると、2年目からは作土中の腐植含量が高くなり、また、いぐさの下層根が多くなるため部分変色茎が減少し、畳表の色調が向上する。


筑後分場・い草研究室 [連絡先] 0944−32−1029
[部会名]農産 [専門]栽培 [対象]工芸作物類 [分類]普及


[背景・ねらい]

近年、長年の連作によるいぐさの収量低下、老熟に伴う部分変色茎の増加が問題となっている。その原因は長年の化学肥料の多量施用や有機物不足による地力低下、土壌理化学性の悪化が考えられる。そこで、いぐさ−水稲体系連作田において、深耕とおがくず入り牛糞堆肥の施用を組み合わせたいぐさの品質向上技術を確立する。

[成果の内容・特徴]

1 いぐさ植付前にディスクプラウによる耕起深15pの深耕を行うと、処理1年目は作土への下層土混入のため、いぐさは生育不良となり減収する(表1)。
2 ディスクプラウによる深耕処理から2年目のいぐさ植付前にロータリーによる深耕を行うと、処理1年目に比べて地力が向上するためいぐさの収量及び品質は回復する。また、普通耕のいぐさに比べて、下層根の割合が高く生育良好となるため収量及び品質が向上する(表1、表2、表3)。
3 深耕に加えておがくず入り牛糞堆肥を10a当たり5t施用すると作土中の腐植含量の増加が認められる。しかし、処理1年目は土壌還元、2年目は初期生育過剰のために部分変色茎が多くなる(表1、表2)。
4 深耕処理時の堆肥施用量を10a当たり2tとすると、部分変色茎が処理1,2年目とも少なくなり、また、畳表の色調が優れる(表1)。
5 深耕を行った場合のいぐさ後作水稲の収量は、下層土混入により1年目では減収するが、2年目からは普通耕と同程度になる(データ略)。

[成果の活用・留意点]

1 いぐさ栽培指導資料として活用する。
2 いぐさ−水稲体系の連作で減収や部分変色茎の多発がみられる圃場に適用する。
3 透水不良田で作土直下にグライ層がみられる圃場では適用しない。
4 深耕3年目以降の基肥施用量は牛糞堆肥の化学窒素肥料に対する肥効率25%を考慮して減らす(参照「有機質資材等の利用上の手引」福岡県農政部)。

[具体的データ]


[その他]
研究課題名:連作障害の軽減技術
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成7〜8年)
研究担当者:藤富慎一、住吉強、内村要介
発表論文等:平成7〜8年度筑後分場いぐさ栽培・加工に関する試験成績書