筑後地域における平成9年産水稲「ヒノヒカリ」の低収および心白米発生の要因

[要約]筑後地域における平成9年産水稲「ヒノヒカリ」の低収は、登熟前期から中期の日射量不足によるものである。また、心白米の発生は、出穂後数日間の多照およびその後の寡照の影響が大きい。


筑後分場・普通作物研究室 [連絡先]0944−32−1029
[部会名]農産 [専門]栽培 [対象]稲類 [分類]指導


[背景・ねらい]平成9年産水稲の作柄は、県全体では作況指数「99」の平年並であった。しかし、地域別にみると、北筑後地域が「96」、南筑後地域が「95」のやや不良であった。特に「ヒノヒカリ」はその傾向が顕著で、さらに玄米の外観品質も心白米の発生や粒の充実不足で不良となり、上位等級米比率は著しく低下した。そこで、筑後地域における平成9年産水稲「ヒノヒカリ」の低収および心白米発生の要因について、気象要因の面から明らかにする。

[成果の内容・特徴]

1 筑後分場における平成9年産水稲収量の平年比は、「ヒノヒカリ」が85、レイホウが100であり、「ヒノヒカリ」の低収が顕著である。収量構成要素では登熟歩合の低下が大きく、検査等級も劣る(表1)。
2 筑後市では、9月上〜中旬の日射量が平年に比べて少なく、福岡市と異なっている(表2)。この期間は「ヒノヒカリ」の登熟前期から中期に相当する。
3 「ヒノヒカリ」の登熟歩合と、u当たり籾数および登熟期間の日射量との間には高い相関関係(r=0.97)がみられ、u当たり籾数に次いで、豊熟前期および中期の日射量との相関が高い(表3)。このことから、「ヒノヒカリ」の低収の要因は登熟前期から中期の日射量不足と判断される。
4 心白米は8月27〜29目に出穂した品種・系統に多<みられ、これらの品種・系統の出穂後数日間は高温多照で経過し、その後数日間は寡照で経過している(図1)。
5 心白米発生率と、出穂後5日間およびその後の5日間の日射量との間には高い相関関係(r=0.93)がみられることから、心白米の発生には出穂後数日間の多照およびその後の寡照の影響が大きい(表4)。

[成果の活用面・留意点]

1 水稲栽培技術指針に登載し、良質米安定生産の参考資料として活用する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:水稲・麦・大豆の作況調査
予算区分:経常
研究期間:平成9年度
研究担当者:福島格助、許斐健治、石丸知道
発表論文等:平成9年度福岡島総試作物部会夏作試験成績概要書