個別大規模稲作経営における湛水土壌中直播(条播)栽培の省力効果


[要約]
個別大規模稲作経営に直播栽培を導入すると、春の労働ピーク時の省力効果が高く、補助作業が軽減され雇用労働を削減することができる。直播栽培の10a当たり労働時間は8.5hで、移植栽培に比べ1.8h(17%)減少する。

企画経営部・経営情報課
[連絡先]  092-924-2936
[部会名] 農産
[専門]   経営
[対象]   稲類
[分類]   指導


[背景・ねらい]
 個別大規模稲作経営では、規模拡大に伴い限られた期間の中で作付拡大を可能とする新しい技術開発を求めている。そこで福岡県で実施されている湛水土壌中直播栽培(条播)の現地実証試験(県北地域の大規模稲作経営)の数値をもとに、主に移植栽培と直播栽培の春作業の比較から直播栽培の省力効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@実証農家の経営概況は、経営面積43.0haで水稲33.0ha麦類10.0haの米麦単作である。水稲の移植は、早期 1回(10ha)、普通期3回(21.3ha)の計4回(31.3ha)行われる。一方直播栽培は、1.7haで導入後3年目である。家族労働力は、男子2名(53才27才)、女子1名(52才)である。

A圃場の規模以外は、同一条件下(農家、オペレーター、品種)で行った現地試験結果である。

B直播栽培による省力化は、労働ピークの激しい播種・移植作業で効果が高い。他方、新たな作業(カルパーコーティング、溝切り)の時期は、労働ピーク時から外れている。従って、直播栽培の導入により、労働ピークの軽減が図られる(図省略)。

C組作業体系は、直播栽培では苗運搬作業が除かれることで、作業者を 1名少なくすることができる。大規模稲作経営における移植時の苗運搬作業は、移植作業の中でも労働負担の大きい作業である(表1)。

D直播栽培の10a当たり労働時間は、8.5hで移植栽培に比較して1.8h(17%)削減される削減される労働の多くは播種や田植時の補助作業であるため、ここに集中的に投入されている雇用労働の削減が可能となる(表2)。

E 10a当たりの生産費は、移植栽培と直播栽培の差はない。直播栽培による物財費の増加分は、労働費の減少で相殺される。収益も、収量が同一であれば移植栽培と直播栽培では差がない(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
@個別大規模稲作経営へ直播栽培を導入する場合の資料として活用できる。

A直播栽培による雇用労働の削減は、労働ピーク時に作業の一部を雇用労働に依存している大規模稲作経営のもとで生ずる。


[具体的データ]




[その他]
研究課題名:地域条件に応じた大規模経営体の展開方向と営農支援システム
予算 区分:国庫(地域基幹)
研究 期間:平成7年度(平成6〜7年)
研究担当者:中原秀人、今林惣一郎
発表論文等:平成6〜7年度農産研究所夏作試験成績概要書