筑後平坦地域における個別大規模米麦二毛作経営の規模限界の推定


[要約]
 筑後平坦地域の家族労働を中心とした個別大規模米麦二毛作経営は、水稲移植栽培のもとでは経営面積が23ha程度で規模限界となる。規模限界での作付面積は水稲17ha 麦23haで、農業所得は1,650万円程度になる。

企画経営部・経営情報課
[ 連絡先 ]  092-924-2936
[部会名]  農産
[専門]    経営
[対象]    稲類
[分類]    指導


[背景・ねらい]
 福岡県南部筑後平坦地域では、米麦二毛作による水田利用が中心である。個別大規模米麦二毛作経営では、規模拡大に伴い地域的な水利慣行から水稲の作型、品種が限定され麦作との労働競合が一層激しくなっている。そこで県南部の事例農家の技術体系をもとに移植栽培での個別大規模米麦二毛作経営の規模限界を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@事例農家は、経営規模18.0haで機械装備は中型機械化体系である。労働力は、家族労働男子2名(69才、45才)、女子1名(44才)で、その他に稲作の播種・移植作業に約 400時間の臨時雇用がある。圃場は、3km以内に7団地とまとまっており、10a当たり労働時間は水稲15.4時間、麦類9.0時間と省力化が進んでいる。

A分析は線形計画法を用い、土地を17haから 1haずつ増加させ最適作付構成の変化と規模限界を推定した。分析ソフトは、農研センター開発の「CLPver5.20」を利用した。

B経営モデルの作成
 ア)作物プロセスは、水稲単作3作型、麦単作2作型、二毛作5作型とした(表1)。 
 イ)労働プロセスは、オペレータ作業と補助作業に区分し、更にオペレータ作業を収穫オ ペレータ作業と春作業のオペレータ作業に区分した。基幹労働は両方のオペレータ作業 と補助作業に、補助労働と臨時雇用は補助作業に設定した。
 ウ)技術係数、利益係数は事例農家の数値をもとに標準化した(表1)。 10a当たり借地料は28,700円、臨時雇用は1日当たり1万円で設定した。
 エ)主な制約は、自作地 3ha、転作率25%、水稲の本田作業は6月以降、基幹労働2人、補助労働 1人である。農繁期の臨時雇用の制限は設けなかった。また、機械装備(45 PS2台、田植機6条2台、4条1台)に応じてオペレータの人数を制約した。

C現行の移植体系のもとでの規模限界の推定(図省略)。
 ア)現行の移植体系では、水田経営面積は23.1haで規模限界となる。なお、家族労働 1時 間当たり所得は、水田経営面積20haで最高(4,620円)となる。
 イ)規模限界での作付構成は、水稲17.3ha、麦類23.1haである。作付構成は、水稲は全て 二毛作(早生+大麦7.6ha晩生+小麦9.7ha)で、麦単作は5.8ha(大麦2.8ha小麦3.0ha  )である。
 ウ)収益は、農業所得1,668万円、家族労働 1時間当たり農業所得4,410円である、家族労 働時間は3,780時間、雇用労働時間は870時間である。
 エ)規模限界での規制要因は、6月上、中旬の春作業のオペレータ作業、及び6月上旬、10  月下旬の収穫オペレータ作業である。 


[成果の活用面・留意点]
@米麦二毛作地帯で大規模個別経営体を育成する場合の資料として活用できる。また、経営規模別の最適な作付構成を決定する場合の指導資料として活用できる。

A稲作の早期栽培や早植の作型が可能である地域では、規模限界と米・麦の作付面積構成が異なる。 


[具体的データ]




[その他]
研究課題名:地域条件に応じた大規模経営体の展開方向と営農支援システム
予算 区分:国庫(地域基幹)
研究 期間:平成7年度(平成6〜7年)
研究担当者:中原秀人、今林惣一郎
発表論文等:平成6〜7年度農産研究所夏作試験成績概要書