水稲新品種候補系統「ちくし赤糯22号」の育成


[要約]
 水稲「ちくし赤糯22号」は「サイワイモチ」と比較して、成熟期がやや遅い“晩生”に属し、“中間型”の赤米糯種である。赤米種としては、倒伏に強く、収量性が優れ、休眠性が浅い。脱粒性は“難”で、玄米の色沢は濃い赤褐色である。     

農産研究所・栽培部・作物品種研究室
[連絡先]   092-924-2937
[部会名]  農産
[専門]    育種
[対象]    稲類
[分類]    普及


[背景・ねらい]
  米の自由化に対応し、国際競争力を有した水田農業を確立するためには、米の高付加価値化及び低コスト化の両面に視点をおいた水稲の新品種開発が緊急な課題となっている。このような情勢の中で、本県の自然条件に適合し、生産者や消費者の多様なニ−ズに対応した水稲品種を育成することは、今後の県産米の販路拡大、維持を図る上で極めて重要である。 
  その1つとして、赤米は地域特産物として注目され、産地化が試みられているが、これまでに赤米の登録品種はない。また、在来種として存在する赤米品種は耐倒伏性、収量性、脱粒性及び休眠性等の改良がほとんど加えられておらず、特に栽培面での問題点が多い。
  そこで、これらの欠点を改良した赤米品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
 「ちくし赤糯22号」は、昭和63年に福岡県農業総合試験場において、強稈で、休眠性が浅い、赤米の糯品種の育成を目標に、強稈で、休眠性が浅い糯品種「サイワイモチ」を母、赤米の粳品種「対馬在来」を父として人工交配した組合せから育成され、平成7年度にはF9になる。本 n統の特性は「サイワイモチ」と比較して、以下のとおりである。

@出穂期及び成熟期はやや遅い“晩生の早”に属する糯種である。

A稈長は20cm程度長く、対馬在来より20cm程度短い。穂長と穂数は同程度の“中間型”である。

B芒は多く、長い。芒及び穎色は赤褐色である。

C休眠性は「対馬在来」より浅く、“中”である。脱粒性及び穂発芽性は“難”である。

D耐倒伏性及び収量性は劣るが、「対馬在来」より優れる。

Eいもち病抵抗性は同じ真性抵抗性遺伝子“Pi-ta2、Pi-a”をもつと推定される。

F玄米は小粒で、色沢は濃い赤褐色である。90%搗精後のもちは淡黄ピンク色を呈し、食味は同程度である。

[成果の活用面・留意点]
@本系統は平成7年7月頃に品種登録出願予定である。

A本系統は県内の地域特産物の1つとして普及を図る。

B耐倒伏性が十分でないので、「サイワイモチ」の施肥基準より減肥する。

C休眠性が奨励品種と比較してやや深いので、他品種への混入をさける。

D同熟期の他品種との自然交雑に留意する。


[具体的デ−タ]

         表1  「ちくし赤糯22号」の特性

 注)農産研究所における平成5〜6年の平均値。移植期:6月20〜21日。


[その他]
研究課題名:赤米品種選定試験
予算 区分:経常
研究 期間:平成6年度(昭和63〜6年)
研究担当者:松江勇次・尾形武文・濱地勇次・今林惣一郎・大里久美・西山壽 
発表論文等:平成7年度水稲新品種決定に関する参考成績書「ちくし赤糯22号」