福岡農総試研報 A−l3
Bull.Fukuoka Agric.Res.Cent.A−l3:17〜22(1994)
水稲における追肥時の労力を削減する目的で,緩効性能の異なるSタイプの被覆尿素肥料(LPS100,LP2S100,LP3S100)を用い,水稲「ヒノヒカリ」に対する基肥1回全量施肥法について検討した。
1 被覆肥料の窒素溶出パターンは,生育時期別にみると年次間の変動がみられたが,移植後の積算地温別にみると年次間変動が少なく,LPS100は900℃から,LP2 S100は1250℃から,LP3S100は1500℃から急速に溶出し始め,S字曲線を描いた。
2 全窒素施肥量を標準窒素施肥量の1割減とし,LP2S100と速効性窒素肥料とを窒素施用量で50%ずつ混合して基肥時に施用すると,水稲の生育,葉色の推移及び 収量は標準的な施肥法とほぼ同等になり,米の品質,食味にも差はみられなかった。LPS100を同様にして施用した場合では,収量は標準施肥法と同等であったが,穂 数がやや多くなり,葉色は7月末から8月中旬頃まで標準施肥より濃く推移し,出穂期には淡くなった。
3 全窒素施用量の50%をLPS100またはLP2S100で施用すると,標準施肥量より1割減肥しても収穫時期の水稲の窒素吸収量は標準施肥法より4〜5%多くなり, 施肥窒素利用率は約20%増加した。
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